
軽い。錆びにくい。加工しやすい。
アルミニウムの評判は、あなたもよくご存じでしょう。
でも——
「軽いのはいい。で、強度は?」 「ステンレスと迷ってる。決め手は何だ?」 「うちの環境で、本当に持つのか?」
そんな問いに、カタログスペックだけでは答えられません。
このページは、アルミニウムの15の特性と4つの設計上の注意点を、「なぜそうなるのか」まで掘り下げて整理した技術資料です。
全部読む必要はありません。 あなたの課題に近いところから、どうぞ。
まず全体像を掴む:主要材料との比較表
特性表 クリックして展開
| 特性 | アルミニウム | 鉄 | 銅 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 比重 | ◎ 約2.7 | △ 約7.8 | △ 約8.9 | 鉄の約1/3!この『軽さ』が設計の常識を変える |
| 強度向上 | ◎ 可能 | ◎ 可能 | ◎ 可能 | 純アルミは柔和だが、合金と熱処理の『合わせ技』で鋼に迫る強靭さへ |
| 低温耐性 | ◎ 優秀 | × 劣る | × 劣る | -196℃でも粘り強い!液体窒素の世界でも頼れるタフネス |
| 磁気特性 | ◎ 非磁性 | × 磁性あり | ◎ 非磁性 | 医MRIにも採用!磁場に影響されず、精密機器の『静かな守護神』に |
| 電気伝導率 | ◯ 約60% IACS | △ 約17% | ◎ 100% IACS | 銅に次ぐ実力!『重量あたり』では銅の約2倍、送電線の軽量化にも貢献 |
| 熱伝導率 | ◎ 約237 W/m·K | △ 約80 W/m·K | ◎ 約398 W/m·K | 鉄の約3倍、ステンレスの10倍以上!『熱を制する』設計のキーマテリアル |
| 再生可能性 | ◎ 高い | △ 低い | ◎ 高い | 新製錬エネルギーの僅か3%で蘇る!地球と未来に優しい循環型金属の代表格 |
| 成形加工性 | ◎ 優れている | △ 劣る | ◎ 優れている | 押出、曲げ、深絞り…複雑形状も思いのまま!設計の自由度を飛躍的に向上 |
| 接合可能性 | ◎ 多様 | △ 限定 | ◎ 多様 | 溶接から接着まで、多様な『絆』で結びつく。異材接合の可能性も広がる |
| 真空特性 | ◎ 優秀 | △ 限定 | ◎ 優秀 | ガス放出が少なくクリーン!半導体製造や宇宙開発など、極限環境で真価を発揮 |
| 毒性 | ◎ 無害 | △ 有害(粉塵) | ◎ 無害 | 人体に優しく、食品や医療分野でも安心。安定した酸化皮膜が安全性の鍵 |
| 主な用途 | 航空・輸送・電子 | 建築・自動車・船舶 | 電子・通信 | 産業別の分布イメージ |
ここから見えるアルミの土俵:軽さ・成形自由度・リサイクル性
ただし、これは「総論」。各特性には、もっと深い話があります。
15の特性:あなたの課題から探す
| あなたの課題 | 見るべき特性 | 一言で言うと |
|---|---|---|
| とにかく軽くしたい | 低密度・軽量性 | 鉄の1/3。この軽さが設計を変える |
| 軽いけど強度が不安 | 強度調整の多様性 | 合金と熱処理で、鋼に迫る強さへ |
| 極寒環境で使いたい | 低温靭性 | -196℃でも粘る。LNGタンクの理由 |
| 磁場の影響を避けたい | 非磁性 | MRIにも使われる「静かな金属」 |
| 電気を効率よく通したい | 電気伝導性 | 銅の60%。でも重量あたりなら2倍 |
| 熱を逃がしたい/伝えたい | 熱伝導性 | 鉄の3倍。ヒートシンクの定番素材 |
| 環境負荷を減らしたい | リサイクル性 | 再生に必要なエネルギー、わずか3% |
| 見た目も機能も両立したい | 表面処理の多様性 | アルマイトで硬く、美しく、自由に |
| 複雑な形状を実現したい | 成形加工性 | 押出・曲げ・深絞り、思いのまま |
| 異素材と組み合わせたい | 接合技術への適応性 | 溶接、接着、リベット。選択肢は多い |
| 電磁ノイズを防ぎたい | 電磁波シールド効果 | 軽くて加工しやすい「見えない盾」 |
| 真空・クリーン環境で使う | 真空特性 | ガス放出が少ない。宇宙でも活躍 |
| 食品・医療で安心して使いたい | 無毒性・安全性 | 人体に無害。酸化皮膜が守る |
| 屋外で長期間使いたい | 耐食性 | 自己修復する保護膜。でも電蝕に注意 |
| 光や熱を反射させたい | 光・熱の反射性 | 可視光90%以上。宇宙服にも使用 |
設計で押さえておくべき4つの注意点
アルミは万能ではありません。ここを知らずに使うと、痛い目に遭います。
| 注意点 | 要するに |
|---|---|
| 疲労強度の限界 | 繰り返し荷重に弱い。設計で回避する |
| 異種金属との電蝕 | 相性の悪い相手がいる。絶縁が基本 |
| 高温での強度低下 | 150℃を超えると別物。耐熱合金か、割り切るか |
| 表面の傷つきやすさ | 柔らかい。だから表面処理で守る |
1. 低密度・軽量性
鉄の1/3。この軽さが設計の前提を変える
比重2.7。同じ強度なら、部材を太くしても鉄より軽い。
燃費、輸送コスト、支持構造
——「軽さ」は全部に効いてくる。
2. 強度調整の多様性
「軽いけど弱い」は、半分だけ本当
純アルミは確かに柔らかい。
でも合金と熱処理で、鋼に迫る強度が出せる。
軽さを捨てずに強くする——それがアルミ設計の基本戦略。
3. 低温靭性
-196℃でも粘る。極寒で「脆くならない」強み
鉄は低温で脆くなる。アルミは逆に、極低温でも靭性を保つ。
LNGタンク、宇宙機器、超電導
——極限環境で選ばれる理由がここにある。
4. 非磁性
磁場を乱さない「静かな金属」
MRI室でアルミが使われるのは、磁石に反応しないから。
精密計測、電子機器、医療
——磁気干渉NGの現場で静かに働く。
5. 電気伝導性
銅の60%。でも「重量あたり」なら2倍
電気を通すなら銅が一番。でも重い。
アルミは「軽くて、そこそこ通す」。
送電線が銅から変わった理由がこれ。
6. 熱伝導性
鉄の3倍。熱を「素早く逃がす」設計の定番
ヒートシンク、ラジエーター、LED放熱板
——熱がこもると困る場所でアルミが選ばれる。
熱伝導率237W/m·K。ステンレスの10倍以上。
7. リサイクル性
再生に必要なエネルギー、わずか3%
アルミ缶は約60日で新しい缶に生まれ変わる。
「使い捨てない素材を選ぶ」が、これからの設計の前提になる。
8. 表面処理の多様性
柔らかい素地を、機能と意匠で武装する
アルマイトで硬く、美しく、抗菌・絶縁の機能も付与できる。
素材の弱点を「設計の自由度」に変える技術がここにある。
9. 成形加工性
押出、曲げ、深絞り。複雑な形を一発で
押出成形なら、複雑な断面を連続して作れる。
部品点数が減り、組立が消える。
「その形、本当に何部品も要りますか?」——アルミが問いかける。
10. 接合技術への適応性
溶接、接着、リベット。つなぎ方の選択肢が広い
「アルミは溶接しにくい」とよく言われる。でも方法は多い。
TIG、MIG、FSW、接着、機械締結
——異種材料との組み合わせも意外といける。
11. 電磁波シールド効果
軽くて加工しやすい「見えない盾」
電子機器が増えれば、電磁ノイズも増える。
アルミは高い導電性で電磁波を反射・吸収。
軽さと加工性を兼ねたEMC対策の現実解。
12. 真空特性
ガス放出が少ない。極限環境が信頼する素材
真空では、材料から出るガスが致命傷になる。
アルミは酸化皮膜が安定していて、アウトガスが少ない。
半導体装置、宇宙機器の定番。
13. 無毒性・安全性
食品にも医療にも。毎日触れても安心
アルミ缶、アルミホイル、医療機器
——私たちは毎日アルミに触れている。
安定した酸化皮膜が溶出を防ぎ、人体への影響は極めて低い。
14. 耐食性
自己修復する保護膜。ただし「相手」を選ぶ
アルミは錆びにくい。酸化皮膜が傷ついても、瞬時に再生するから。
ただし異種金属との接触には注意。
正しく使えば、屋外でも長く持つ。
15. 光・熱の反射性
可視光90%以上。「跳ね返す」設計の主役
照明の反射板、断熱材、人工衛星の熱制御
——アルミは光も熱もよく反射する。
赤外線は95%以上。宇宙服にも使われる反射材。
4つの注意点
1. 疲労強度の限界
繰り返し荷重に「逃げ場」がない
という疲労限度がある。アルミにはない。
小さな力でも、繰り返せばいつか折れる。
形状で応力を散らし、寿命を予測する設計が要る。
2. 異種金属との電蝕
相性の悪い相手と触れると、アルミが溶ける
アルミと銅を直接つなぎ、水分があると——電蝕が起きる。
対策はシンプル。絶縁する。
電位差の小さい相手を選ぶ。知っていれば防げる。
3. 高温での強度低下
150℃を超えると、別の素材になる
アルミは低温に強いが、高温に弱い。
150〜200℃で強度が大きく落ちる。
耐熱合金を選ぶか、冷却するか、別素材に切り替えるか
——判断が要る。
4. 表面の傷つきやすさ
素地は柔らかい。
「表面処理とセット」が前提
アルミは鉄より柔らかい。素地のままだと、すぐ傷がつく。
でも、それを前提に設計すればいい。
硬質アルマイト、塗装、コーティング——表面で守る。
素材ごとの特性比較で見る、アルミニウムの立ち位置
──「軽い」「錆びにくい」だけじゃない、他素材とのバランスで考える
ここからは、視点を少し変えて──
アルミニウムの特性をより深く理解するために、他の代表的な素材との比較を見ていきます。
鉄、ステンレス、プラスチックなど、設計現場でよく並ぶ選択肢と比較することで、
「なぜアルミを選ぶのか」「逆にどんな場面では適さないのか」といった判断がしやすくなります。
たとえば──
- 軽さは圧倒的。でも剛性はどうか?
- 耐食性は高いけれど、コスト面では?
- 熱や電気を通す性質は、他の金属と比べてどうか?
このように、「絶対的な性能」よりも「バランスの中で何を優先するか」が素材選定の本質です。
では、実際に基本特性を並べて見てみましょう。
【素材別の基本特性比較(代表値)】
| 特性 | アルミニウム | 鉄 | ステンレス鋼 | プラスチック(汎用樹脂) |
|---|---|---|---|---|
| 比重(密度) | 約2.7 | 約7.8 | 約7.9 | 約0.9〜1.4 |
| 剛性(ヤング率) | 中 | 高 | 高 | 低 |
| 耐食性 | 高(電蝕注意) | 低 | 非常に高 | 樹脂による(可変) |
| 熱伝導性 | 高(237 W/m·K) | 中(80 W/m·K) | 低〜中(15〜30 W/m·K) | 非常に低 |
| 電気伝導性 | 高(約60% IACS) | 低(17% IACS) | 低 | 絶縁体が多い |
| 加工性 | 非常に高 | 中〜低 | 中 | 高 |
| 表面硬度 | やや低い(処理要) | 高 | 高 | 非常に低 |
| コスト感 | 中〜高(合金で変動) | 低 | 高 | 安〜中(幅広い) |
表を見るポイント
- 軽量化と加工性を重視するならアルミが有利
- 高剛性や耐摩耗性を最重視するなら鉄・ステンレスに軍配
- コスト最優先なら鉄や樹脂も選択肢になる
素材選定は、このような一長一短のトレードオフを見極める作業です。【選定基準の整理】「軽さ」「加工性」「耐食性」…何を優先するかで変わる最適解
ここまで比較してきた特性を踏まえ、
実際に素材を選定する際には、次のような視点が重要です。
「どの条件において、その素材がもっとも適しているか」
以下に、よくある設計判断の軸ごとに整理しました。
【選定視点別:素材の適正比較】
| 優先する条件 | アルミニウムが有利な場面 | 他素材が優位な場面 |
|---|---|---|
| 軽量化 | 航空・輸送・可搬機器 | 固定部品(鉄・ステン) |
| 加工しやすさ | 多彩な成形対応 | 焼入れ・溶接中心なら鉄 |
| 耐食性(屋外) | 表面処理前提で高い | 塩害下ならモリブデン系ステンレス |
| コスト重視 | 中〜大量生産なら有利 | 極端なコスト圧縮は鉄・樹脂 |
| 熱/電気伝導性 | 放熱・電気筐体に有効 | 導電性のみなら銅/断熱なら樹脂 |
| 意匠性 | アルマイト等で高級感 | 鏡面・傷耐性ならステンレス |
こうして比較して初めて、
「アルミが最適」と判断できる場面が見えてきます。
アルミニウムの魅力と選び方を、次の一歩へ
ここまでご紹介してきたように、
アルミニウムには軽量・耐食・加工性といった数々の強みがあります。
一方で、摩耗・疲労・高温といったリスクも存在し、
これらを「知った上でどう活かすか」が、素材選定・設計の鍵となります。
また、他素材との比較や、合金系統の特徴を踏まえることで、
「なんとなく選ぶ」のではなく、「狙って選び、狙って活かす」ことができるようになります。
この特性ページが、
あなたの素材選定と設計の精度を、次の一歩へと導くヒントになれば幸いです。
