【軽さ——比重2.7】アルミニウムが「軽い金属」である理由

鉄の3分の1という事実

アルミニウムの比重は、2.7。

比重とは、水を1としたときの相対的な重さ。同じ体積で比べると、アルミニウムは水の2.7倍の質量があるということです。

では、他の金属と比べてみましょう。

金属比重アルミを1としたとき
アルミニウム2.701.00(基準)
7.82.89
8.93.30

アルミニウムは、鉄の約3分の1の重さ。

同じ大きさの部品を作るなら、アルミニウムは鉄の3分の1しか重さがない。これが、アルミニウムが「軽い金属」と呼ばれる理由です。

この記事は、アルミニウムの特性について、日本アルミニウム協会の資料をもとに構成しています。数値には測定条件があるため、設計にあたっては原典をご確認ください。


目次

なぜアルミニウムは軽いのか

「軽い」という現象には、原子レベルの理由があります。

原子量の違い

アルミニウム原子の原子量は、約27
鉄原子の原子量は、約55.9

アルミニウム原子は、鉄原子の約半分の重さしかない。

素材を構成する「部品」そのものが軽いのです。

原子の大きさ

ただし、原子量だけでは説明がつきません。

原子量の比は、約2.1倍。ところが、比重の比は約2.9倍です。ずれがあります。

このずれは、原子の大きさから来ます。

原子量を比重で割ると、その金属が1モルあたりに占める体積が出ます。
アルミニウムは26.98 ÷ 2.70。鉄は55.9 ÷ 7.8

計算すると、アルミニウム原子1個が占める体積は、鉄原子の約1.4倍です。
原子が軽い(2.1倍)× 原子が大きい(1.4倍)= 約2.9倍

比重の差と、一致します。

金属は、原子が規則正しく並んだ「結晶」でできています。

アルミニウムの結晶構造は「面心立方格子」。
格子定数は4.0496×10⁻⁸cm

軽い原子が、ゆったり並ぶ。だから軽い。

原子の重さと、原子の大きさ。この二つが、密度を決めます。


■ コラム:かつてアルミは「貴金属」だった

アルミニウムの元素が発見されたのは、1807年。工業生産が始まったのは、1886年です。

地球の表面にある金属元素のうち、最も量が多いのはアルミニウムです。それでも、単体として取り出すのは極めて難しかった。

原料のボーキサイトを砕き、薬品と混ぜて分離すると、アルミナという白い粉ができます。このアルミナは、アルミニウムと酸素が強く結びついた状態です。ここから酸素を取り除くには、電気分解が要ります。

1886年、アメリカのホールとフランスのエルーが、それぞれ独立に電解製錬法を発明しました。翌1887年、オーストリアのバイヤーが、湿式アルカリ法によるアルミナ製造法を発明。この二つで、現在のボーキサイトからアルミニウムまでの製造法が確立します。

それまで、アルミニウムは貴重品でした。

日本で最初のアルミニウム製品が作られたのは1894年。国内初の製錬は1934年です。

鉄や銅は、紀元前から使われてきました。工業化から130年余りのアルミニウムは、金属としては若い。それでも今では、日本の金属材料の需要で、鉄に次いで2番目の量を占めています。

技術の進歩が、貴金属を日用品に変えました。


「軽い」と「薄くできる」は違う

ここで、重要な注意点があります。
「アルミは軽いから、薄くできる」とは限りません。

ヤング率(剛性)の問題

金属の「硬さ」には、いくつかの指標があります。
そのひとつが「ヤング率」(縦弾性係数)。力をかけたときに、どれだけ変形しにくいかを示す数値です。

金属ヤング率(GPa)アルミを1としたとき
アルミニウム68.31.00
鉄(熱間圧延材)1922.81
銅(硬質)1171.71

アルミニウムのヤング率は、鉄の約3分の1。
同じ力をかけると、アルミニウムは鉄の約3倍たわむ。

つまり、同じ厚さ・同じ形状で作ると、アルミニウムの部品は鉄より「たわみやすい」のです。

ここまでは、よく語られる話です。


同じ重さで比べると、答えが変わる

しかし、設計者が実際に置かれる条件は、「同じ厚さ」ではありません。

「同じ重さで、どれだけ強度と剛性を出せるか」です。

三つの見方があります。

引張・圧縮なら、鉄と同等

ヤング率を比重で割った値を、比剛性と呼びます。

アルミニウムは 68.3 ÷ 2.70 = 25.3。
鉄は 192 ÷ 7.8 = 24.6。
銅は 117 ÷ 8.9 = 13.1。

アルミニウムと鉄は、ほぼ同じです。

同じ重さの棒を引っ張る、押す。この条件では、アルミは鉄に勝ちません。負けもしません。

強度は、合金で決まる

引張強さを比重で割った値を、比強度と呼びます。同じ重さで、どれだけの力に耐えられるか。

日本アルミニウム協会の資料に載っている材料から計算すると、こうなります。

材料引張強さ(kgf/mm²)比重比強度
1100-H18(純アルミ系)16.92.76.3
鉄(熱間圧延材)42.07.85.4
7075-T6(Zn添加)57.72.820.6

純アルミ系の1100-H18は6.3。一般鋼の5.4と、大きくは変わりません。

アルミであれば自動的に比強度で勝つ、というわけではありません。

一方、亜鉛を加えた7075-T6は20.6。鋼の約4倍です。同じ「アルミニウム」でも、3倍以上の開きがあります。

協会の資料は、こう書いています。

純アルミニウムの引張強さはあまり大きくないが、マグネシウム、マンガン、銅、けい素、亜鉛などを添加して合金にしたり、圧延などの加工や熱処理を施したりして、強度を高くすることができる

押出形材でよく使われる合金は、この二つの中間にあります。

  • 3003は、純アルミニウムの加工性と耐食性を落とさずに強度を高めた合金です。1100より強度が約10%高く、成形性、溶接性、耐食性に優れます。
  • 6063は、代表的な押出用合金です。押出性に優れ、複雑な断面形状の形材が得られます。耐食性、表面処理性も良好です。
  • 6005C(6N01)は、中強度の押出用合金です。押出性とプレス焼入性に優れ、複雑な形状の大型薄肉形材が得られます。耐食性、溶接性も良好です。

なお、協会の資料では、アルミニウム合金5083-Oの比強度を11.5、一般鋼を5.4としています。

軽さは、素材が最初から持っています。
強さは、合金設計と熱処理でつくる。この二つが揃って、比強度が効いてきます。

用途に応じた合金の値については、日本アルミニウム協会の「アルミニウム材料の諸特性データベース」をご確認ください。

曲げなら、アルミが有利

協協会の資料には、もう一つの比較があります。

同じ質量・同じ長さの円柱を片持ち梁とし、同じ荷重をかける。密度が小さいほど、同じ重さで太い直径が取れます。直径が太くなれば、断面係数が大きくなる。結果、発生する最大応力も、最大たわみも小さくなります。

曲げでは、同じ重さならアルミのほうが有利です。


「軽いが剛性で劣る」わけではありません。

同じ厚さでは劣る。同じ重さの引張・圧縮では同等。同じ重さの曲げでは有利。強度は、合金で決まる。

どの条件で比べるかで、答えが変わります。

厚くするか、形状で補うか

剛性が必要な部品でアルミニウムを使う場合、設計はこうなります。

  • 厚くする:材料を増やして剛性を確保
  • 形状を工夫する:リブ(補強の骨)を入れる、中空構造にする

厚くしても、鉄より軽い。形状で稼げば、さらに軽い。

複雑な断面形状を一体で成形できれば、材料を最小限に抑えながら、必要な剛性を確保できます。

軽さを活かすには、設計の工夫が必要。

これがアルミニウムの特性を理解する上で重要なポイントです。


■ コラム:新幹線の車体がアルミニウムである理由

日本で初めてオールアルミ合金製の鉄道車両が登場したのは、1962年。山陽電気鉄道2000系でした。

新幹線では、東北・上越新幹線の200系が最初です。日本アルミニウム協会は、これを第2.5世代に分類しています。軒けたと長けたにA7003合金の押出形材、側板・屋根板・垂木にA5083合金の板材、側ばり・横ばり・側柱にA7N01合金の押出形材が使われました。

1980年代初頭、押出性に優れ、薄肉化が可能なA6N01合金が開発されます。これにより、側板や屋根板を押出形材だけで構成できるようになりました。1992年のJR東海300系新幹線が、この第3世代です。側ばりには、A6N01合金の中空押出形材が使われています。

第1世代から第3世代までを、シングルスキン構体と呼びます。

第4世代では、A6N01合金の大型中空押出形材によって、構体全体が構成されるようになりました。形材そのものが高い剛性を持つため、柱や垂木が不要になります。部品点数が減り、構体の組み立てが容易になりました。この構体を、ダブルスキン構体と呼びます。

700系、N700系、E5系、E6系が、この世代です。形材の接合には、FSW(摩擦攪拌接合)が広く採用されています。

押出形材の断面設計が、車体の構造そのものを変えました。

板と骨組を組み合わせる設計から、断面の中に骨組を織り込む設計へ。アルミニウムの押出加工が可能にした転換です。

熱膨張係数——もうひとつの注意点

アルミニウムは、温度変化で寸法が変わりやすい金属でもあります。

金属線膨張係数(×10⁻⁶/℃)
アルミニウム23.6
16.8
11.7

アルミニウムの線膨張係数は、鉄の約2倍。

温度が上がると、鉄の2倍伸びる。
温度が下がると、鉄の2倍縮む。

高温環境や、温度変化が大きい環境で使う場合は、この「伸び縮み」を考慮した設計が必要です。

例えば、長尺のアルミ形材を固定するとき、すべての点を完全に固定すると、温度変化で歪みが生じることがあります。一部をスライド可能な固定にするなど、逃げを設ける設計が求められます。

合金による比重の違い

アルミニウムの物理的性質は、通常、合金の種類や質別に関わらず、同じ値が用いられます。比重は2.70。

日常的な重量計算では、この一つの値で足ります。

ただし、添加する元素によって、比重はわずかに変わります。

合金系主な添加元素比重特徴
1000系純アルミ2.71電気伝導性◎、柔らかい
2000系銅(Cu)2.75〜2.85高強度、航空機向け
5000系マグネシウム(Mg)2.65〜2.70耐食性◎、船舶・屋外
6000系Mg + Si2.70押出性◎、汎用性高い
7000系亜鉛(Zn)2.75〜2.85最高強度、航空機向け

マグネシウムはアルミニウムより軽い金属です。これを加える5000系は、純アルミより少し軽くなります。銅(比重8.9)や亜鉛を加える2000系・7000系は、少し重くなります。日本アルミニウム協会の資料では、純アルミ系の1100-H18が2.7、亜鉛を含む7075-T6が2.8です。

わずかな差が問題になる設計では、合金ごとの値を確認してください。日本アルミニウム協会の「アルミニウム材料の諸特性データベース」に、詳細な表が掲載されています。

どの合金でも、「鉄の約3分の1」という軽さは変わりません。


「比重」を設計に活かす

設計者にとって、比重は実用的な数字です。

重量の概算

アルミニウム部品の重量は、簡単に計算できます。

体積(cm³)× 2.7 = 重量(g)

例えば、10cm × 10cm × 1cm の板なら、 100cm³ × 2.7 = 270g

鉄なら、 100cm³ × 7.8 = 780g

同じ形状で、約3分の1の重さになることがわかります。

押出形材の場合

押出形材は、断面積と長さで体積を計算します。

断面積(cm²)× 長さ(cm)× 2.7 = 重量(g)

複雑な断面でも、CADで断面積を出せば、すぐに重量がわかります。


■ コラム:飛行機とアルミニウム

1911年、ジュラルミン(2000系アルミ合金)が実用化され、航空機に使用されました。

以来、アルミニウムは航空機の主要材料であり続けます。軽量で高強度なアルミニウムが、機体の構造を支えてきました。

日本では1936年に、超々ジュラルミンが開発されています。

現在も、人工衛星打ち上げ用ロケットの主要材料はアルミニウムです。

さらに、リチウムを添加した低密度・高剛性の合金が開発され、航空機や大型構造物用の材料として注目されています。

「軽さ」が、そのまま性能になる世界。

アルミニウムの比重2.7は、航空機設計の出発点でした。


まとめ

  • 比重2.7:水を1としたとき、アルミニウムは2.7
  • 鉄の約3分の1:同じ体積なら、アルミは鉄の3分の1の重さ
  • 軽い理由は二つ:原子が軽く(約2.1倍)、かつ原子が大きい(約1.4倍)
  • ヤング率は鉄の約3分の1:同じ厚さでは、アルミは鉄よりたわみやすい
  • 同じ重さの引張・圧縮:比剛性は鉄とほぼ同等
  • 同じ重さの強度と曲げ:アルミが有利
  • 熱膨張係数は鉄の約2倍:温度変化で伸び縮みしやすい

軽さを活かすには

アルミニウムの比重2.7は、単なる数字ではありません。

鉄の3分の1という軽さは、設計の可能性を広げる特性です。

ただし、軽さだけを見て「鉄をアルミに置き換えればいい」とはなりません。

同じ厚さではたわみやすいこと、熱膨張が大きいこと——これらの特性を理解した上で、形状や固定方法を工夫する必要があります。

中空構造、リブ構造、複雑な断面。材料の軽さを活かしながら、必要な剛性を確保する。

軽さを「設計」で活かす。

それが、アルミニウムを使いこなすということです。


関連する特性

参考文献・データ出典

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