中国の排出量取引制度(ETS)とは?
排出量取引制度(ETS:Emissions Trading System)とは、各企業に温室効果ガスの排出枠を割り当て、その枠を超えた排出をした場合、他の企業から排出枠を購入する必要がある仕組みです。排出量を市場で売買することで、企業が自発的にCO2排出を削減しようとする動機を作り、最終的に全体の排出量削減を目指すものです。
ETSの拡大計画
2024年9月10日、中国の生態環境省は、このETSの対象を拡大する計画を発表しました。具体的には、セメント、鉄鋼、アルミニウムの生産が新たに加わります。これらの業界が加わることで、対象となる温室効果ガスの排出量は、中国全体の約60%に達し、これは米国の総排出量を超える可能性があります。
2段階で進行するETS拡大の流れ
ETSの拡大は、以下の2段階で進行します。
- 第1段階(2024~2026年):ETSのルールを企業に周知し、排出量データの質を向上させる。これにより、企業はETSの仕組みに慣れ、排出量の正確な測定が可能になります。
- 第2段階(2027年以降):企業に割り当てられる排出枠を徐々に縮小し、より積極的なCO2削減を促進します。排出枠が減ることで、企業は効率的な生産や新しい技術導入を検討する必要が出てきます。
このETSの拡大は、2030年までに排出量がピークに達し、その後2060年までにカーボンニュートラル(実質排出量ゼロ)を実現するという、中国政府の目標を達成するための重要なステップです。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収量を相殺して、実質的にCO2の排出をゼロにすることを意味します。これは、地球温暖化を抑制し、持続可能な未来を築くための重要な目標です。
EUの国境炭素税と中国への影響
中国は、
欧州連合(EU)が2026年から実施予定の「国境炭素税」にも対応を迫られています。国境炭素税とは、環境規制が緩い国からの輸入品に対して、追加で課される税金です。これにより、輸入製品も環境への配慮を求められます。
中国の重工業(セメント、鉄鋼、アルミニウムなど)も、EUへの輸出が大きな割合を占めているため、脱炭素化のスピードをさらに加速させる必要があります。
アルミニウム業界に起こりうること(日本への影響)←可能性です。
中国が排出量取引制度(ETS)を拡大し、CO2削減を強化すると、日本のアルミニウム業界にも以下のような影響が起こりうる可能性があります。
- アルミニウムの価格が上がる可能性
中国で環境に配慮した生産が進むことで、生産コストが増え、輸入する日本でも価格が上がる可能性があります。 - 日本企業が環境にやさしい製造方法に切り替える必要が出る可能性
輸出先の国(例えばEU)が環境基準を厳しくすると、日本の企業もCO2削減を意識した製造方法を求められる可能性があります。 - 再生アルミの活用が進む可能性
CO2排出量を減らすために、再生アルミの活用が広がる可能性があります。再生アルミは新しく作るよりもエネルギーを節約でき、CO2削減に貢献できるためです。
これらは確実ではなく、あくまで今後起こりうるシナリオとして考えられます。政策の変化や市場の動向によって影響の大きさやタイミングが変わる可能性があります。
この記事をより簡単に説明
排出量取引制度(ETS)とは、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスを出す量に上限を決め、その枠内で各企業が排出量を守る必要がある仕組みです。もし排出枠を超えてしまう場合は、他の企業から排出枠を買わなければなりません。これにより、企業はCO2の排出を減らす努力をするようになります。
また、カーボンニュートラルとは、CO2をゼロにすることを意味します。地球温暖化を防ぐために、CO2の排出を減らすことが世界的に重要視されています。
国境炭素税は、環境に優しくない方法で製品を作る国からの輸入品にかかる追加の税金です。これにより、環境に優しい製品づくりが求められます。
加藤軽金属工業株式会社でも、こうした国際的な動向を注視し、持続可能なアルミニウム製造に向けた取り組みを進めています。環境負荷を減らしつつ、より効率的でクリーンな製品をお客様に提供するため、これからも技術開発を続けてまいります。