アルミに機能を足す ― めっきでできること

アルミで部品をつくりたい。でも、素のアルミだけでは、欲しい性能に少し届かない。すり減らない表面、特殊な環境でのさびへの強さ、確実な通電。そうした性能は、めっきで足せます。

この記事は、めっきで何ができるかをまとめたものです。アルミにめっきをすると、どんな性能が足せて、どんな場面に向くのか。読み終えるころには、めっきが自分の用途に合うかどうか、見当がつくはずです。

目次

めっきで、何ができるのか

「アルミの部品で、こうしたい」。その場面ごとに、見ていきます。

表面を、硬くしたい

めっきで表面が硬くなると、こすれても傷つきにくく、すり減りにくくなります。そのため、動く部品(摺動部)や、ものが触れる面が、長持ちします。

アルミ素材の硬さは、合金と調質で変わります。主力の6063で60〜73、いちばん硬い7075-T6でも150ほどです。これに対して、めっきは表面をはるかに硬くできます。

硬さ(目安)
アルミ素材 6063-T5ブリネル60/ビッカース約63
アルミ素材 6063-T6ブリネル73/ビッカース約76
アルミ素材 6061-T6ブリネル95/ビッカース約100
アルミ素材 7075-T6(最も硬い部類)ブリネル150/ビッカース約157
アルマイトビッカース200ほど
硬質アルマイトビッカース400ほど
無電解ニッケル(めっきまま)ビッカース500前後
無電解ニッケル(熱処理後)ビッカース900〜1000
硬質クロムビッカース800〜1000

※アルミ素材はブリネル硬さ(実測値)、ビッカースはその換算の目安です。アルマイトとめっきは、薄い皮膜に適したビッカース硬さです。

無電解ニッケルは、めっき後に熱処理を加えると、硬質クロムに並ぶ900〜1000ほどになります。いちばん硬いアルミ(7075)でも150ほどですから、めっきは素材の数倍から十数倍の硬さを、表面に与えられるのです。それ以上が要るなら、硬質クロムめっきを選びます。

ここで効くのが、硬くなるのは表面だけ、という点です。芯は、軽くて粘りのあるアルミのまま残ります。摺動はあるが大きな荷重はかからない部品なら、軽い素材の芯に、表面だけめっき、で足ります。摩耗には強く、軽さは保つ。表面処理ならではの組み合わせです。

さびを、抑えたい(特殊な環境で)

アルミはもともと、表面の酸化皮膜で錆びにくい金属です。16年におよぶ海辺での暴露試験でも、アルミがさびで失われた深さは3マイクロメートルほど。鉄の400マイクロメートルと比べると、けた違いに錆びに強いことがわかります。

アルマイトでこの皮膜を厚くすれば、屋外や塩分のある環境でも、かなりの耐食性が得られます。もちろん、ふつうの防錆なら、めっきよりアルマイトが向く場面も少なくありません。

では、どんなときにめっきか。それは、その酸化皮膜やアルマイトが壊れてしまう環境です。強い酸やアルカリ、薬品、100℃を超える高温などにさらされると、皮膜が劣化して、下地のアルミが腐食してしまいます。こうした特殊な環境では、ニッケルなどのめっきのほうが保つことがあります。

複雑な形に、均一に乗せたい

無電解ニッケルは電気を使わず、化学反応で金属を析出(せきしゅつ)させます。電気を使わないので、深い穴の奥や角にも、ほぼ均一な厚みで乗ります。電気を流すめっきは電流の流れ方で膜厚にムラが出ますが、無電解ニッケルではそれが起きにくい。そのため、寸法をきっちり出したい部品で重宝します。

※析出とは、溶けていた金属が固体となって表面に出てくることです。

接続部の、通電を確保したい

アルミは電気をよく通す金属です。しかし、表面にできる酸化皮膜が接触抵抗になり、接続部では通電が不安定になります。そこで、ニッケルやスズのめっきで皮膜のない金属面をつくり、接続部の通電を安定させます。


やりたいことから引くと、こうなります。

やりたいこと向くめっき
表面を硬く、すり減らないように無電解ニッケル(熱処理)、硬質クロム
特殊な環境でさびを抑える無電解ニッケル ほか
複雑な形に均一に無電解ニッケル
接続部の通電を確保するニッケル、スズ

ここまで何度も出てきた無電解ニッケルは、硬さ・さび・通電・滑りをまとめて底上げできます。そのため、どれを選べばいいか分からないとき、最初の候補になります。

ただし、そのままでは付かない

アルミに、いきなりめっきはできません。なぜなら、アルミは空気に触れた瞬間、表面に酸化皮膜をつくるからです。この皮膜はアルミを守ってくれますが、めっきにとってはやっかいです。皮膜の上に金属を乗せても、つるりと滑って、密着しないのです。

そこで、まず皮膜を落としながら、めっきが食いつく土台をつくります。代表的なのがジンケート処理で、酸化皮膜を取り去りつつ、表面を亜鉛の薄い膜に置き換え、その上に目的の金属を乗せていきます。

地味な工程ですが、めっきの仕上がりは、ほとんどここで決まります。「アルミのめっきは前処理で八割」と言われるほどです。ここを飛ばして普通のめっきと同じ感覚で進めると、膨れたり剥がれたりしてしまいます。アルミのめっきは、金属を乗せる前の段階に、技術が要るのです。

アルマイトとの違い

アルミの表面処理を調べると、必ずアルマイトが出てきます。アルマイトとめっきは、色か機能かで分かれるわけではありません。アルマイトも硬くでき(硬質アルマイト)、色もつけられ(カラーアルマイト)、さびにも強い。つまり、硬さ・色・耐食は、どちらでも出せるのです。

違うのは、もっと根本のところです。

まず、仕組みが逆です。めっきは品物を陰極にして、表面に別の金属を乗せる処理。一方、アルマイトはアルミを陽極にして、アルミ自身を酸化させ、酸化皮膜に変える処理です。別の金属を乗せるか、アルミ自身を皮膜に変えるか。出発点が、反対を向いています。

そして、いちばん効く違いが電気です。アルマイトの酸化皮膜は、電気を通しません(絶縁)。一方、めっきは金属を乗せるので、電気を通します。つまり、通電させたいならめっき、絶縁したいならアルマイト。ここははっきり分かれます。

ほかにも、選び分けに効く違いがあります。表にまとめます。

めっきアルマイト
仕組み別の金属を乗せるアルミ自身を酸化させ皮膜にする
電気通す通さない(絶縁)
硬さ・色・耐食できるできる
使える素材鉄・樹脂など幅広いアルミ(など)に限る
弱点種類により異なる曲げ・加工で割れやすい

色や質感の仕上がりは、別のページ(アルミの表面処理と見た目)に実物の見本を載せています。見た目で迷っている方は、そちらをご覧ください。

なお、一つの部品でも、見える部分はアルマイト、通電する部分はめっき、というように、両方を使い分けたり、組み合わせたりすることもあります。どちらか一方に決めなければならない、というわけではありません。

また、めっきは機能だけでなく、模様や立体感を出すデザインにも使えます。その例は立体模様めっきのページにまとめています。

「形材をつくる側」だから、まとめて相談できる

アルミの表面処理は、「何をしたいか」が決まらないと選べません。そして、本当は、形を決める段階から一緒に考えたほうが、うまくいきます。なぜなら、処理を後回しにすると、出来上がってから「この形だと、このめっきは乗りにくい」と分かって、戻ることになるからです。

加藤軽金属工業は、アルミ押出形材のメーカーです。形材の設計から、押出、機械加工、表面処理まで、協力会社と組んで、ひとつの窓口で引き受けています。めっきやアルマイトそのものは専門の協力会社の仕事ですが、「この部品を、こう使いたい」という入り口から、形と処理をまとめて相談できます。

もちろん、表面処理だけを専門業者に頼む道もあります。ただ、形からつくる部品なら、設計の段階で「この用途なら、この処理」と見通しを立てておいたほうが、あとが楽です。小ロットでも短納期でも、相談に乗れます。試作の一個から、量産まで。

専門用語が分からなくても構いません。やりたいことを伝えていただければ、まずはそこから、ご相談に乗ります。

まとめ

アルミの表面に、めっきで機能を足せます。表面を硬くしてすり減りを抑える、特殊な環境でのさびを抑える、複雑な形に均一に乗せる、接続部の通電を確保する。やりたいことに合わせて、使うめっきを選びます。迷ったときの基本は、無電解ニッケルです。

ただし、二つ、覚えておきたいことがあります。一つは、アルミは下地づくりに技術が要ること。もう一つは、さびや見た目だけが目的なら、アルマイトのほうが向く場合も多いことです。どちらを選ぶかは、どんな環境で、何のために使うのかで変わります。

「アルミで、こんなことはできないか」。その一言からで構いません。形をつくる側から、表面処理まで含めて、一緒に考えます。

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