サプライチェーンとはなにか、またなぜ必要なのか
サプライチェーン(supply chain)とは、製品やサービスを提供する企業の全体像であり、原材料の調達から最終製品の販売までを続ける一連のプロセスです。そして、それぞれの行動が環境への影響をもたらしています。
サプライチェーン排出量とは、その製品やサービスを提供する過程で排出される温室効果ガスの量の事です。
具体的には、原材料の生産、製造、輸送、使用、廃棄などのプロセスで発生する二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などが含まれます。これらの排出量は、企業や個人の行動によって大きく左右されるため、詳しく知っていく必要があります。
企業がサプライチェーンにおける排出量を削減することは、環境への貢献だけでなく、企業価値の向上にもつながります。環境に配慮した企業は、消費者からの支援が得やすくなり、企業のイメージ進歩にもつながるためです。
それでは、サプライチェーン排出量を削減するために、まず排出源を正確に特定するから削減のための戦略を立てること。これを段階的に説明していきます。
サプライチェーン排出量の発生源の把握から削減までを簡単に説明
まずは基礎的の環境省の資料の紹介です。
環境省HPより引用 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html
スコープ1は直接的な排出量(例:自社でガスを使い火を使ったので二酸化炭素が発生した等)
スコープ2は他社から供給されたエネルギーの関節排出(例:僕が契約している電気会社は火力発電です。つまり使ってる電気には大量の二酸化炭素を排出しているから、利用している分間接的に温室効果ガスを発生させている等)
スコープ3はスコープ1と2以外の関節排出(例:会社のゴミが業者に回収されたとして、ゴミ収集車が走るための燃料から、ごみを焼却する時に排出された温室効果ガス等)事業者の活動に関連する他社の排出の事です。
これらのスコープを総合的に評価することで、自らの環境への影響をより正確に把握し、持続可能に適切な対策ができます。
そのためには発生源の認識、削減目標の設定、削減策の検討、削減策の実行、ぞして継続的な改善を行うことでサプライチェーンの持続可能な管理を行い、将来的には環境に優しい【供給チェーンの循環型経済への移行】を実現しましょう。
発生源の認識
発生源を正確に特定することで、問題の本質を認識できます。
自社の供給チェーンの排出量を知り、自社の製品やサービスの生産において、どのような工程でどのような量の温室効果ガスが発生しているのかを知り、自社が使用する原材料や資源の調達手順でどのような排出量が発生しているかも確認する必要があります。
発生源の認識は持続可能な未来の実現に向けて環境問題を考える重要な一歩です。
削減目標の設定
発生源の特定をした後、排出量の具体的な数字を割り出し削減目標を設定することが必要です。
削減目標は、具体的な数値と期限を設定することで、目標達成のための行動計画を立てるための基礎となります。サプライチェーン全体での削減量や、各工程や部門ごとの削減量など、目的に応じて設定します。
これを自社のみで完結しようとすると膨大な時間と手間が発生します。そのため、算出には専門の業者を頼ることがおすすめです。
削減策の検討
削減目標を設定するには、具体的な削減策を検討する必要があります。削減策には、省エネや再生可能エネルギーの導入、製品の軽量化やリサイクルによる資源循環、サプライヤーとの協力による共同削減など削減対策を検討する際には、削減効果、コスト、実施可能性などを総合的に判断する必要があります。
削減策の実行
削減策を決定したら、実際に実行していくことが必要です。削減策の実行には、社内の関係者やサプライヤーとの協力が必要になります。実施状況の監視・評価などが必要となります。
継続的な改善
削減策を実行した後も、それを継続して行うことで持続可能性と効率性を両立させた供給チェーンの構築の可能性が見えてきます。
「知る」事で数字を把握し「設定、決定、実行」これらを実践することで、単純に今まであった設備の不備、物流ルートの見直し、電気の無駄を改善をする効果が期待できます。
近年だと環境問題は非常に重要視されていて環境に優しい会社とアピールすることはもちろん、選ばれる基準にもなります。企業にとって重要な経営戦略となり得るため継続的に改善をすることがおすすめです。
温室効果ガス排出量削減の例、各スコープごとに紹介
【スコープ1】直接的な排出
・電力の削減:照明やエアコンなどの電気機器の効率化によって、消費電力を削減することで温室効果ガスの排出量を削減できます。(例:照明をLEDに、その他省エネ家電への更新)
・燃料の削減:社用車やトラックなど、車両の使用量を削減することで温室効果ガスの排出量を削減できます。
・建物の改修:断熱材の張り替えや、窓の断熱性能の向上など、建物の改修によって、エネルギー効率を上げて温室効果ガスの排出量を削減することができます。
【スコープ2】他社から供給されたエネルギーの関節排出
・再生可能エネルギーの導入:太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入によって、燃料の消費を削減することで、温室効果ガスの排出量を削減できます。
・ロジスティクスの改善:輸送ルートの最適化や積載率の向上、燃費の良い車両の導入などによって、物流業務におけるエネルギー消費を削減することで、温室効果ガスの排出量を削減できます。
・製造プロセスの見直し:省エネルギー設備や省工程の導入によって、製品の生産におけるエネルギー消費を削減することで、温室効果ガスの排出量を削減できます。
【スコープ3】スコープ1と2以外の関節排出 事業者の活動に関連する他社の排出
・廃棄物の減量化:リサイクルやリユースなどの廃棄物削減に取り組むことで、廃棄物の処理に伴う温室効果ガスの排出量を削減できます。
・サプライヤーとの協力:原材料や部品を調達する際、温室効果ガスの排出量が低いサプライヤーを選する。
各スコープの例に対してSDGsにあてはまるもの
先ほど紹介したスコープの中にSDGs項目が含まれています。
SDGsは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを目標としています。
※SDGsについて詳細は環境省、外務省、国際連合広報センターHPよりご確認ください。
・SDGs7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに):クリーンなエネルギーの利用促進
・SDGs9(産業と技術革新の基盤を作ろう):持続可能な産業とイノベーション
・SDGs11(住み続けられるまちづくりを):持続可能な都市とコミュニティ
・SDGs12(つくる責任つかう責任):持続可能な消費と生産パターン
・SDGs13(気候変動に具体的な対策を):気候変動対策
【スコープ1】
- 電力の削減:クリーンなエネルギーへの移行や効率化は、クリーンなエネルギーの利用促進(SDG7)に関連します。
- 燃料の削減:車両の使用量の削減は、持続可能な都市とコミュニティ(SDG11)に関連します。
- 建物の改修:エネルギー効率向上は、持続可能な都市とコミュニティ(SDG11)に関連します。
【スコープ2】
- 再生可能エネルギーの導入:再生可能エネルギーの利用は、クリーンなエネルギーの利用促進(SDG7)に関連します。
- ロジスティクスの改善:物流業務の効率化は、持続可能な都市とコミュニティ(SDG11)に関連します。
- 製造プロセスの見直し:エネルギー効率化は、持続可能な産業とイノベーション(SDG9)に関連します。
【スコープ3】
- 廃棄物の減量化:廃棄物削減は、持続可能な消費と生産パターン(SDG12)に関連します。
- サプライヤーとの協力:持続可能な調達やサプライチェーンの改善は、持続可能な消費と生産パターン(SDG12)に関連します。
まとめ
サプライチェーンにおける排出量削減は容易なことではありません。
企業や個人が行うさまざまな行動が影響を考慮するため、課題は多岐にわたり、低炭素素材・低炭素アルミニウムの購入など今後の負担も大きくなることが予想されます。
企業がサプライチェーンにおける排出量を削減することは、環境への貢献だけでなく、企業価値の向上にもつながります。環境に配慮した企業は、消費者からの支援が得やすくなり、企業のイメージ進歩にもつながるためです。
今後、排出量削減に取り組む企業が増加していくことが予想されますが、この活動は無理なく出来る範囲で行うことが重要と考えます。継続は力なりと言いますが継続し続けることは思っているよりもずっと難しい課題です。少しずつでも活動することで自分の力を蓄え、環境に優しいグリーン企業を目指しましょう。
参考文献:環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
サプライチェーン排出量の算定に有用な各種ツールを掲載しております。ご理解を深めていただくためにも、ぜひご活用ください。…