2022年12月13日、欧州議会は、EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入に関してEU理事会と暫定的な合意に達しました。
4月18日に承認された決定により、2023年10月1日から2025年末までが移行期間となり、その間は報告義務となるが2026年以降はCBAM証書の購入が義務付けられるとされています。
CBAMはEU ETS以下で導入され、セメント、アルミニウム、肥料、電気エネルギー生産、水素、鉄鋼、および一部の下流製品のセクターに対して廃棄枠の無償割り当てが廃止されることになります。この廃止は2026年から2034年までの9年間段階的に行われます。
CBAMとは(Carbon Border Adjustment Mechanism)
CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)は、EUが炭素排出量削減目標を達成し、公正な競争環境を確保するために検討している国境炭素税の仕組みです。
CBAMの目的は、EUが採用している温室効果ガス(GHG)の削減目標を達成するために、EU内の企業と第三国の企業に対して公平な競争環境を提供することです。EUは、環境への負荷を抑えた製品やサービスを提供する企業を奨励し、炭素排出量の高い企業には課税することで、気候変動対策を進めることを目指しています。
EUに輸入される一部の製品に対して、その製品の製造過程で発生した炭素排出量に基づいて課税することが考えられています。これにより、EU内で製造される商品との競争力を確保し、炭素排出量の削減を促進することが期待されています。
対象項目
CBAM以前のEUの主な環境政策
CBAM(EU炭素国境調整メカニズム)の前に、EUは環境関連の政策や取り組みを実施してきました。以下に、CBAMの前の主な政策をいくつか紹介します。
EU排出量取引制度(EU ETS)
EU ETSは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出権を市場で取引する仕組みでEUは2005年にEU ETSを導入しました。
排出量の上限を設定し、企業に対して排出権を割り当てます。排出権を超過した場合は追加の排出権を購入する必要があります。
この制度は、企業に経済的な刺激を与えながら、温室効果ガスの削減を促進することを目指しています。
エネルギー効率指令(EED)
EUは、エネルギー効率を向上させるための指令を採択しています。
これには、建築物のエネルギー効率向上や省エネ家電の普及促進などが含まれています。
エネルギー効率の向上は、温室効果ガスの排出を削減し、持続可能なエネルギーの利用を促進する重要な要素です。
「2020年までに、域内で消費が想定される総エネルギー量を、効率化を通して1990年比で20%削減する」という目標です。
再生可能エネルギー指令(RED)
EUは再生可能エネルギーの利用を増やすための指令を導入しています。
この指令は、再生可能エネルギーの割合を増やし、化石燃料に依存しないエネルギー供給を実現することを目指しています。
再生可能エネルギーの利用は、温室効果ガスの排出削減に寄与すると同時に、エネルギーの多様化やエネルギーセキュリティの向上にもつながります。
まとめ
CBAMとEU ETSの導入は、日本企業にとって気候変動対策の継続努力をすることのきっかけの一つになるでしょう。
日本企業は、製品のCO2排出に関する情報の提供や排出枠の変更に対応するために、内部の環境管理システムを強化し、より持続可能な生産手法を採用する必要があります。
このような国際的な気候変動対策の動向は、日本企業にとって新たなビジネスチャンスをもたらすと共に、再生可能エネルギーや低炭素技術などの分野において成長する可能性があります。
時代の流れに置いて行かれないよう、継続努力していくことが今後の私たちの課題です。